私の作る草履は,師匠に倣って七島藺(しちとうい)を使っています。
「七島藺」は東南アジア原産のカヤツリグサ科の植物です。奄美七島(トカラ列島 = 鹿児島県十島村)から伝わったのが名称の由来だそうです。琉球い草とも呼ばれるため,琉球畳と呼ばれる畳は,七島藺から作られているわけです。最近では「縁なし畳」のことを「琉球畳」と呼ぶ傾向もあるそうですが,これは間違いです。七島藺で編まれた畳表は,琉球表・豊後表・青表(青筵)と呼ばれます。普通のい草は断面が丸く・細いのに対して,七島藺は断面が三角形で,非常に太いのが特徴です。機械化ができない部分が多く,栽培は非常に重労働となり,労働投入時間は丸藺の1.5倍,水稲栽培と比較すると6倍にもなってしまいます。そういう事情や,需要の減少などにより,現在では大分県国東半島の安岐町・国東町の四軒の農家(平均年齢70歳超)でしか生産されていない,正に絶滅危惧種となってしまっています。全ての農家の作付け面積を合計しても,熊本県のい草農家一軒分にも満たないそうです。外国では主に中国・台湾・タイなどで生産されていて,日本では3割程度が輸入品だそうです。
東京オリンピックまでは柔道の畳に使われていましたが,その後ビニール畳が登場し,生産地が激減したそうです。丸藺の畳表と比べて大変丈夫で,ほとんど畳表の貼り替えの必要がないほど(せいぜい裏返し程度)です。現在でも琉球畳として,一般家屋や茶室の畳などとして利用されています。
師匠は草履作りにあたり,藁(わら)や普通のい草など,いろいろな材料を試したそうです。その中で「これだ!」と選ばれたのが,この七島藺です。
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